慶尚道・密陽の郡守(郡を治める者)には阿娘(アラン)という娘がいた。
ある月の明るい夜、嶺南楼に出かけたアランの前に、ぺクという男が突如現れ、密かに胸に秘めた思いを打ち明ける。
しかし、想いを拒絶されたぺクはアランの胸をわしづかみにし、
アランは汚された乳房を自ら切り落としペクともみ合ううち、ペクの刃に刺され息絶える。
あくる日、真実を知らずアランがかけおちしたものと思いこんだ父親は、家の恥だと郡守を辞めソウルへと帰る。
それからというもの郡守となった者は皆、アランの怨念によってとり殺されてしまった。
そんなある晩のこと、進んで郡守になることを決意したリ・サンサ(李上舎)という男の前に
胸から血を流し首に刃が刺さったままのアランが現れ、魂と離ればなれになった体を探してほしいと告げる。
蝶に姿を変えたアランが帽子にとまり犯人を教えると、つめよられた男はとうとう自分がアランを殺したことを白状するのである。
リ・サンサはアランを殺したペクを死刑にし、洛東江に捨てられた死体を探しあてた。
すると、アランは二つに引き裂かれた魂と体を取り戻し成仏したという。
この伝説は、民謡「アリラン」の由来の一つでもある。